以前の記事で、母分散が未知の場合の一つの母平均の検定と推定について、基本的な考え方と進め方を解説しました。

母平均の検定では、
今回は、母分散に注目し、一つの母分散に関する検定と推定について解説します。
1. 適用できる場面
以下の事例を使って、母分散の検定と推定を解説します。
ある薬品の1kg中の有効成分の量は、母分散が
新ラインからランダムに10個のサンプルを抜き取り、有効成分の量を測定した結果は、以下の通りでした。(単位:g)
10.2, 9.6, 9.9, 10.3, 10.1, 9.8, 10.2, 10.4, 10.1, 10.3
この事例では、新ライン製造品の有効成分の量が正規分布
2. 分布について
正規分布に従う母集団からn個のサンプル
ここで、以下の基本事項が知られています。

検定統計量が
3. 一つの母分散に関する検定
それでは、母分散の検定手順を見ていきます。
基本的な流れは、以前の記事で解説した母平均の検定の流れと同じですので、異なる点を特に詳しく説明します。
3-1. 一つの母分散の検定手順
手順1. 帰無仮説
検定の目的に応じて、(1)~(3)のいずれかを選択します。
(1)
(2)
(3)
手順2. 有意水準
通常は、
手順3. 手順1(仮説)と手順2(有意水準)に対応した棄却域を決める。
(1)棄却域:
(2)棄却域:
(3)棄却域:
手順4. 採取したデータ
手順5. 判定する。
3-2. 一つの母分散の検定における棄却域の求め方
母平均の検定では、正規分布または
正規分布と
一方、
【両側検定】
確率5%を上下に2.5%ずつ割り当てます。
下側:「=CHISQ.INV(0.025,
(
上側:「=CHISQ.INV.RT(0.025,

【片側検定】
下側:「=CHISQ.INV(0.05,
上側:「=CHISQ.INV.RT(0.05,
3-3. 一つの母分散の検定の実施例
事例1について、検定手順に従って検定してみましょう。
手順1. 帰無仮説
母分散が従来より小さくなったかどうかを知りたいので、左片側検定で帰無仮説と対立仮説を設定します。
手順2. 有意水準
手順3. 棄却域を決める。
棄却域:
手順4. 検定統計量
得られたデータより、
手順5. 判定する。
よって帰無仮説
4. 一つの母分散に関する推定
以前の記事で解説した通り、母分散
4-1. 一つの母分散の推定手順
点推定はデータの分散
区間推定については、基本事項から
これを変形すると、以下のようになります。
左項の括弧内の
一つの母分散の推定手順をまとめると、以下のようになります。
点推定:
区間推定:信頼率
4-2. 一つの母分散の推定の実施例
事例1について、点推定と区間推定を行ってみましょう。
点推定:
区間推定:信頼率95%の信頼区間を求めます。
5. 実践のためのアドバイス
モノづくりにおいては、特性値のばらつきに着目することはとても重要で、通常は工程能力指数で規格値に対する余裕度を判断します。
工程能力指数の算出には母分散が必要なので、母分散が基準値と比べて変化しているかどうか、あるいは母分散はどの程度かを検定や推定したい場面は多いでしょう。
そのときは、今回の
6. おわりに
今回は、一つの母分散の検定と推定について解説しました。
一つ母分散の検定と推定では、左右非対称の
工程能力を改善するためにはばらつきの低減が必要なので、対策の効果の有無を確認するときに、母分散の検定と推定を使うとよいでしょう。