以前の記事で、相関係数について解説しました。

相関係数とは、2つのデータの関係の強さを数値で表す指標でしたね。
算出した相関係数は、あくまで母集団の一部であるサンプルから算出した相関係数であり、母集団の相関については判断できません。
これまでの記事で、母平均と母分散などについて検定や推定できることを述べてきましたが、母集団の相関係数である母相関係数についても検定や推定を適用できます。
今回は、母相関係数に関する検定と推定について解説します。
1. 2次元正規分布について
2つの変数
おのおのが正規分布に従い、かつ
簡単にするために、
このとき、
相関係数 | 角度0 | 90°回転 |
---|---|---|
![]() | ![]() | |
![]() | ![]() |
散布図は、2次元正規分布からサンプリングしたサンプルを
2. 無相関の検定
対になった2つのデータ
2つの変数の関係の強さを数値で表す指標が、相関係数
しかし、われわれが知りたいのは、サンプルの関係の強さではなく、2つの変数の母集団における関係の強さです。
このとき、サンプルから得られた相関係数
検定する場合、帰無仮説
2-1. 無相関の検定手順
手順1. 帰無仮説
無相関の検定は、通常両側検定で行うので、以下のように設定します。
手順2. 有意水準
通常は、
手順3. 採取した
検定統計量
手順4. 検定統計量
2次元データの個数を
で求められます。
手順5. 棄却域を決める。
棄却域:
手順6. 判定する。
2-2. 無相関の検定の実施例
25個の2次元データの相関係数
手順1. 帰無仮説
無相関の検定は、通常両側検定で行うので、以下のように設定します。
手順2. 有意水準
手順3. 採取した
手順4. 検定統計量
手順5. 棄却域を決める。
棄却域:
手順6. 判定する。
よって帰無仮説
3. 母相関係数の推定
以前の記事で解説した通り、母平均
母相関係数
まず、
と変換します。(
ここで、
このとき、
3-1. 母相関係数の推定手順
点推定はデータの相関係数
区間推定については、
ただし、
また、
4-2. 母相関係数の推定の実施例
無相関の検定で使ったデータ
点推定:
区間推定:信頼率95%の信頼区間を求めます。
3-1.で求めた各式の値を求めます。
したがって、母相関係数
と求められます。
4. おわりに
今回は、母相関係数に関する検定と推定について解説しました。
検定統計量が近似的に正規分布に従うことを利用して、検定や推定が可能です。
2次元データで相関係数を求めたときは、合わせて母相関係数の検定と推定も実施してみてください。