なぜデータを収集することが重要なのか?

世の中にはさまざまなデータが存在します。
特に最近は、ビッグデータの収集が可能となり、ビジネスのさまざまなプロセスにおいて、データを活用して問題解決につなげるデータサイエンスが脚光を浴びています。
しかし、なぜわれわれは苦労してデータを収集する必要があるのでしょうか?
今回は、データを収集することの重要性を見ていきます。

この記事で分かること

・データは事実に基づく管理に不可欠であること

・データを収集する目的

・質の高いデータの収集方法

1. なぜデータを収集することが重要なのか?

われわれは仕事などさまざまな場面で、しばしばデータを集めます。
例えば、自社製品の売上の推移、製造した製品の寸法、顧客の満足度調査などです。
ところで、そもそもなぜデータを収集するのでしょうか?
それは「事実に基づく管理」(ファクトコントロール)に不可欠だからです。

1-1. 事実に基づく管理とは

「事実に基づく管理」とは何でしょうか?
事実に基づく管理とは、勘や過去の経験に頼るのではなく事実に基づいて現状を分析し、客観的に判断してものごとを進めることで、「ファクトコントロール」と呼ぶこともあります。
ここで事実とは、本当のこと、実際に起こったこと、存在すること、を指します。
事実に基づいて現状を分析するためには、事実をデータで客観的に表す必要があり、データを収集することは事実に基づく管理に不可欠です。
事実に基づく管理の進め方を大まかにまとめると、以下のようなフローになります。

1-2. 事実に基づく管理の具体的な進め方

データを収集することは、事実に基づく管理には必須であることはご理解いただけたでしょう。
そこで、事実に基づく管理の具体的な実施手順の例を紹介します。

仕事の進め方でよく知られているものはPDCAサイクルですが、上記のデータの取り方はPDCAサイクルに従っており、手順1~3がP、手順4~6がD、手順7がC、手順8がAに該当します。

2. データを収集する目的とは?

データを取り始める前に、そのデータを使う目的が何かを明らかにしておく必要があります。
やみくもにデータを収集しても、やりたいことに適したデータでなければ、苦労して全く意味がないデータを集めたということになりかねません。
そこで、主な使用目的でデータを分類しましたので、皆さんがデータを収集する目的を考えるときの参考にしてください。

2-1. 記録のため

製品に使った材料のロットNoや製造設備の設定条件など、記録・保存用に取るデータです。
第三者への報告や、トラブルが起こったときの調査などのために記録し、保管しておきます。

2-2. 検査のため

製造した製品の検査データや原材料の検査データなど、製品やサービスの良し悪しを判定するためのデータです。
製造業では、受入検査出荷検査でよく取られます。

2-3. 現状把握のため

問題解決においては、まずは現状を把握することがセオリーです。
来客数の推移はどうなっているのか、現在の不良率はどうかなどは、現状を把握するためのデータです。
どこで問題が起こっているかを絞り込むためには、必ず取る必要があります。

2-4. 要因解析のため

問題解決においては、現状把握と並んで重要なプロセスが要因解析です。
何が問題を引き起こしているのかを特定するに必要なデータです。
例えば、材料ロットと不良率に関係はあるか、広告の表示方法によって売上は変わるか、といったデータが該当します。
効果的な対策を打つには、注目する特性と因果関係がある要因を把握する必要があり、関係性を解析するためにデータを収集します。

2-5. 調整のため

因果関係が明らかになっているときに、特性を狙い値に合わせこむために収集するデータです。
例えば、塗料の吐出量を振って塗膜厚さを測定し、得られたデータから塗膜厚さが規格の中央になるように吐出量を調整する、といったことが挙げられます。

3. 質の高いデータの収集方法

さまざまな目的でデータを取る機会は多いですが、質の高いデータを取るには、データの取り方に意識を向ける必要があります。
質の高いデータの取り方の要点をまとめておきます。

1) 目的に合ったデータを取る。
2) 層別して整理できるよう取る。
3) 測定方法を標準化してから取る。
4) あらかじめ5W2H(誰が取るか、いつ取るか、どこで取るか、何を取るか、どんな目的で取るか、どのように取るか、いくつ取るか)を明らかにしておいてから取る。
5) データは必ずばらつくということを理解して取る。
6) チェックシートを使うなど、必要なデータを漏れなく取る。
7) データを取ったら速やかに整理し解析する。
8) データを取った日、測定者、場所など、データ採取の履歴を残す。

4. 実践のためのアドバイス

事実(=データ)に基づいて物事を判断したり決断したりすることは、品質管理の基本です。
自ら計画して実施する小規模な実験であればデータを取るのは容易ですが、量産設備や市場からデータを取るのは骨が折れます。
しかし、いかにデータを取って測定するかは企業の重要なノウハウですので、質の高いデータの収集や測定も重要な開発案件であることを認識し、計画的に開発を進める必要があります。
取れるデータを取るのではなく、取るべきデータを取る、取れないのであれば取れるようにするという意識を忘れないでください。

5. おわりに

今回は、データを取ることの重要性について解説いたしました。
データは事実に基づく管理に必要不可欠であり、DXの時代になってデータの重要性はますます増大しています。

しかし、目的に合わないデータをいくら収集しても、目標は達成できません。
データ収集はプロジェクトを成功させるための、最も重要なプロセスと言っても過言ではありません。
IT技術の進化でデータを取りやすくなっていますが、むやみにデータを取るのではなく、必要なデータは何かを常に意識して取集してください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です