計量値の管理図を作る際、最もよく使われるものが以前に紹介した\(\bar{X}-R\)管理図です。
 工程管理における管理図の活用②~Xbar-R管理図の作り方
   工程管理における管理図の活用②~Xbar-R管理図の作り方  
しかし、計測工数や計測コストがかかるなど、合理的な群を作ることが難しい場合があります。
そのような場合、群の大きさを1つまり、個々のデータをプロットする管理図が用いられ、それが\(X-R_m\)管理図です。
今回の記事では、\(X-R_m\)管理図の作り方を解説します。
1. \(X-R_m\)管理図とは
\(X-R_m\)管理図とは、個々の測定値\((X)\)を統計量とした\(X\)管理図と移動範囲\(R_m\)を統計量とした\(R_m\)管理図を併用します。
\(X-R_m\)管理図は、群の大きさが1で範囲の概念がないため、群の範囲\(R\)ではなく、前のデータの差の絶対値を移動範囲\(R_m\)を使います。
2. \(X-R_m\)管理図の作り方
手順1 データを取る
少なくとも約20~25群から、それぞれ一つずつのサンプルを取り測定してデータを取ります。
手順2 移動範囲\(R_m\)を計算する
\(R_m\)は1つ前のデータとの差の絶対値で、一般式で書くと以下のようになります。
\(R_{mi}=|(\)第\(i\)番目の測定値\()-(\)第\(i-1\)番目の測定値\()|\)
手順3 データの平均\(\bar{X}\)を計算する
手順4 移動範囲の平均\(\bar{R}_m\)を計算する
手順5 管理線を計算する
\(X\)管理図と\(R_m\)管理図それぞれで、管理線として中心線(CL)、上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)を計算します。
| \(X\)管理図 | \(R_m\)管理図 | |
|---|---|---|
| CL | \(\bar{X}\) | \(\bar{R}_m\) | 
| UCL | \(\bar{X}+2.66\bar{R}_m\) | \(3.267\bar{R}_m\) | 
| LCL | \(\bar{X}-2.66\bar{R}_m\) | 存在しない | 
手順6 管理図に記入する
測定値\(X\)と移動範囲\(R_m\)を、上下に対応させて打点します。
1つ目の打点は\(X\)のみで、\(R_m\)の打点は2つ目から始まります。
さらに、手順5で求めた中心線、UCL、LCLを数値とともに記入します。
通常、中心線は実線、UCLとLCLは破線を用います。
手順7 管理状態にあるかを判定する
3. \(X-R_m\)管理図の作成例
30個のデータの例を使って、手順1~7に従って\(X-R_m\)管理図を作成してみましょう。
手順1~7
(単位省略)
| No | \(X\) | \(R_m\) | 
|---|---|---|
| 1 | 242 | ー | 
| 2 | 233 | 9 | 
| 3 | 235 | 2 | 
| 4 | 232 | 3 | 
| 5 | 236 | 4 | 
| 6 | 231 | 5 | 
| 7 | 222 | 9 | 
| 8 | 229 | 7 | 
| 9 | 228 | 1 | 
| 10 | 239 | 11 | 
| 11 | 237 | 2 | 
| 12 | 229 | 8 | 
| 13 | 224 | 5 | 
| 14 | 240 | 16 | 
| 15 | 241 | 1 | 
| 16 | 233 | 8 | 
| 17 | 229 | 4 | 
| 18 | 221 | 8 | 
| 19 | 228 | 7 | 
| 20 | 227 | 1 | 
| 21 | 215 | 12 | 
| 22 | 214 | 1 | 
| 23 | 227 | 13 | 
| 24 | 239 | 12 | 
| 25 | 231 | 8 | 
| 26 | 233 | 2 | 
| 27 | 226 | 7 | 
| 28 | 223 | 3 | 
| 29 | 238 | 15 | 
| 30 | 234 | 4 | 
| 平均 | 230.53 | 6.48 | 
手順5 管理線の計算
| \(X\)管理図 | \(R_m\)管理図 | |
|---|---|---|
| CL | \(\bar{X}=230.5\) | \(\bar{R}_m=6.5\) | 
| UCL | \(\bar{X}+2.66\bar{R}_m=247.8\) | \(3.267\bar{R}_m=21.2\) | 
| LCL | \(\bar{X}-2.66\bar{R}_m=213.3\) | 存在しない | 
手順6 管理図に記入

手順7 管理状態の判定
\(X\)管理図でLCL付近の打点はあるものの、管理限界の範囲内であり、それ以外に特徴的な打点はないことから、工程は管理状態と判断できます。
4. おわりに
今回は、\(X-R_m\)管理図の作り方を解説しました。
実務では、群で1個しかデータを得られないことはしばしばあるので、そのようなときは\(X-R_m\)管理図を使って工程を管理しましょう。







