工程管理における管理図の活用④~X-Rm管理図の作り方

計量値の管理図を作る際、最もよく使われるものが以前に紹介した\(\bar{X}-R\)管理図です。

工程管理における管理図の活用②~Xbar-R管理図の作り方

しかし、計測工数や計測コストがかかるなど、合理的な群を作ることが難しい場合があります。
そのような場合、群の大きさを1つまり、個々のデータをプロットする管理図が用いられ、それが\(X-R_m\)管理図です。
今回の記事では、\(X-R_m\)管理図の作り方を解説します。

この記事で分かること

・\(X-R_m\)管理図の作り方


1. \(X-R_m\)管理図とは

\(X-R_m\)管理図とは、個々の測定値\((X)\)を統計量とした\(X\)管理図と移動範囲\(R_m\)を統計量とした\(R_m\)管理図を併用します。
\(X-R_m\)管理図は、群の大きさが1で範囲の概念がないため、群の範囲\(R\)ではなく、前のデータの差の絶対値を移動範囲\(R_m\)を使います。

2. \(X-R_m\)管理図の作り方

手順1 データを取る

少なくとも約20~25群から、それぞれ一つずつのサンプルを取り測定してデータを取ります。

手順2 移動範囲\(R_m\)を計算する

\(R_m\)は1つ前のデータとの差の絶対値で、一般式で書くと以下のようになります。

\(R_{mi}=|(\)第\(i\)番目の測定値\()-(\)第\(i-1\)番目の測定値\()|\)

手順3 データの平均\(\bar{X}\)を計算する

手順4 移動範囲の平均\(\bar{R}_m\)を計算する

手順5 管理線を計算する

\(X\)管理図と\(R_m\)管理図それぞれで、管理線として中心線(CL)、上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)を計算します。

\(X\)管理図\(R_m\)管理図
CL\(\bar{X}\)\(\bar{R}_m\)
UCL\(\bar{X}+2.66\bar{R}_m\)\(3.267\bar{R}_m\)
LCL\(\bar{X}-2.66\bar{R}_m\)存在しない

手順6 管理図に記入する

測定値\(X\)と移動範囲\(R_m\)を、上下に対応させて打点します。
1つ目の打点は\(X\)のみで、\(R_m\)の打点は2つ目から始まります。
さらに、手順5で求めた中心線、UCL、LCLを数値とともに記入します。
通常、中心線は実線、UCLとLCLは破線を用います。

手順7 管理状態にあるかを判定する

3. \(X-R_m\)管理図の作成例

30個のデータの例を使って、手順1~7に従って\(X-R_m\)管理図を作成してみましょう。

手順1~7

(単位省略)

No\(X\)\(R_m\)
1242
22339
32352
42323
52364
62315
72229
82297
92281
1023911
112372
122298
132245
1424016
152411
162338
172294
182218
192287
202271
2121512
222141
2322713
2423912
252318
262332
272267
282233
2923815
302344
平均230.536.48

手順5 管理線の計算

\(X\)管理図\(R_m\)管理図
CL\(\bar{X}=230.5\)\(\bar{R}_m=6.5\)
UCL\(\bar{X}+2.66\bar{R}_m=247.8\)\(3.267\bar{R}_m=21.2\)
LCL\(\bar{X}-2.66\bar{R}_m=213.3\)存在しない

手順6 管理図に記入

手順7 管理状態の判定

\(X\)管理図でLCL付近の打点はあるものの、管理限界の範囲内であり、それ以外に特徴的な打点はないことから、工程は管理状態と判断できます。

4. おわりに

今回は、\(X-R_m\)管理図の作り方を解説しました。
実務では、群で1個しかデータを得られないことはしばしばあるので、そのようなときは\(X-R_m\)管理図を使って工程を管理しましょう。

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